宅建士の講座を色々と調べられてる方であれば、資格学校の公式サイトや講座パンフレットなどでよく「教育訓練給付制度の指定講座です!」といった内容を目にする機会が多いかと思います。
こちらの制度については、名前だけみれば”教育訓練するための給付金がもらえる制度?”といった感じで読み取れますが、まぁ、大体合っており、その指定講座となっている講座を受講すれば合格・不合格問わず受講料の一定割合分を給付金として支給してくれるというなんともありがたい制度となってます。
ただし、こちらの制度については、誰でも利用できるものではなく、かつ受講後に給付金を受け取るための条件などもありますので、事前に知識を入れておかないとせっかくのチャンスをみすみす逃すことに繋がってしまいます。
そこで、本記事では、教育訓練給付制度の内容や利用できる方の条件、申請方法などを分かりやすく解説していきたいと思いますので一緒に見ていきましょう!
教育訓練給付制度の制度内容
教育訓練給付制度とは、厚生労働省が雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的に、資格取得の補助金を出す制度となっており、厚生労働大臣が指定する講座のみがその対象となります。
また、教育訓練給付制度では、大別すると一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金の2つが設けられており、それぞれ対象となる資格講座や給付金額などが異なります。
一般教育訓練給付金
対象講座の受講期間 |
■通学講座の場合 1ヶ月以上1年以内(受講時間50時間以上) ■通信講座の場合 |
給付金額 |
受講者本人が指定教育訓練実施者に対して支払った教育訓練費の20%に相当する額がハローワークより支給されます。ただし、20%に相当する額が10万円を超える場合は最大10万円とし、4,000円を超えない場合は支給されません。 |
参考資料 |
一般教育訓練給付金についてのリーフレット(PDF) |
宅建士の資格講座などは、こちらの一般教育訓練給付金に該当しており、教育訓練給付制度といえば大体こちらの一般のほうを指すことが多いかと思います。
給付金額も受講料の20%とかなりの額となっており、受講料が10万円を超える講座を受講した場合は2万円キャッシュバックと考えるとバカにならない金額です。
専門実践教育訓練給付金
対象講座の受講期間 |
■業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目的とする養成施設の過程 原則1年以上3年以内 ■専門学校の職業実践専門課程 ■専門職大学院 ■職業実践力育成プログラム ■一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする過程 ■第四次産業革命スキル習得講座 |
給付金額 |
■訓練受講中 1年あたり [教育訓練費] × [40%] で最大32万円を支給(ただし4千円を超える場合)。訓練期間は最大で3年間なので、3年で最大96万円を支給。 ■訓練修了後 |
参考資料 |
専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金についてのリーフレット(PDF) |
専門実践教育訓練給付金は少々内容が複雑な感じとなっておりますが、簡単に言っちゃえば一般教育訓練給付金は受講期間が1年以内の講座が対象、専門実践教育訓練給付金は受講期間が1年以上3年以内のより専門的な分野の講座が対象、といった感じで覚えていただければよいかと思います。
なお、給付金の解説部分についてですが、こちらについては一般教育訓練給付金は受講修了のみの条件で満額支給(20%)となってましたが、専門実践教育訓練給付金に関しては1年ごと(複数年受講の場合)に受講料の最大40%支給、かつ受講修了後に1年以内の被保険者として雇用されればプラスで受講料の最大20%支給となっており、合わせると最大で60%の給付金が支給されます。
専門実践教育訓練給付金の対象講座は期間が長い、かつ100万円以上の高額な受講料になってる講座が多いので、こちらの制度は是が非でも利用したいところですね。
制度が利用できる方の条件
教育訓練給付制度については、誰でも給付金を受けれる資格があるってワケではなく、結構複雑な条件をクリアしている必要があり、かつ、一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金それぞれで条件が異なります。
まぁ、言葉で説明するとかなり長ったらしくなりますので、以下に条件チェック用のフローチャートを載せましたので、まずはこちらをご覧ください。
一般教育訓練給付金の対象者チェックフローチャート
専門実践教育訓練給付金の対象者チェックフローチャート
基本的な判断の流れについては、一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金ともに似てますが、雇用保険の加入期間の年数で大きな差があります。専門実践教育訓練給付金の場合、支給金額も大きい分、再度給付金制度を利用するとなると10年のインターバルが必要となるので、基本的には1人1回まで利用できる制度と考えたほうがよいかと思います。
なお、給付制度の対象講座を受講したあとに、実は給付金の対象者ではなかった、、といった話がよくありますので、上記のフローチャートでチェックした上で、結構微妙なラインにおられる方は以下の方法で確認するのがより確実に判断することが出来ます。
対象者かどうかをしかるべき機関に確認してもらう方法
実はハローワークでは、教育訓練給付制度の対象者か否かを確認してくれるサービスを行っており、ハローワークや資格学校などの教育訓練施設で配布している「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入し、本人来所/代理人/郵送のいずれかの方法で、照会者の地域を管轄するハローワークに提出します。
照会結果については後日「教育訓練給付金支給要件回答書」で通知されてきます。
依頼後、即回答ってワケではありませんが、この方法であれば自分自身が対象者かどうかを確実に知ることが出来ますので、当落ラインにいる方は講座を受講する前にこちらで必ずチェックしておくことをおすすめします。
照会の方法 | 条件 |
本人が提出する場合 | 本人確認と住居確認が出来る書類、運転免許証・住民票の写し・雇用保険受給資格者証・国民健康被保険者証・印鑑証書のいずれか(いずれもコピー可)を提出する必要があります。 |
郵送で提出する場合 | 「本人が提出する場合」に記載した書類のいずれかのコピー。原本の場合は「住民票の写し」か「印鑑証明書」のみに限られます。 |
代理人が提出する場合 | 代理人の場合は更に委任状が必要となります。 |
電話で照会 | 電話での照会はトラブルの元ということで応じてくれません。 |
指定講座を受講~給付金を受け取るまでの流れ
自分自身が教育訓練給付制度の対象者かどうかが判断できた(できそう)ってことで、次に申請方法について解説していきます。
こちらも一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金それぞれで段取りや用意するモノが異なってきますので、分けて説明したいと思います。
一般教育訓練給付金の申請の流れ
一般教育訓練(指定講座)の受講終了日の翌日から起算して1ヶ月以内に、受講者本人の住居所を管轄するハローワークに本人が直接出向いて下記の書類を提出する必要があります。
①教育訓練給付金支給申請書 |
教育訓練施設(受講している資格学校)より発行されますし、以下のページからも申請書のダウンロードが出来ます。 |
②教育訓練修了証明書 |
教育訓練施設(受講している資格学校)より発行されます。 |
③領収書 |
受講者本人が納付した教育訓練経費について、訓練施設(資格学校)が発行してくれます。 |
④キャリアコンサルティングの費用 |
キャリアコンサルティングの費用の支給を申請する場合は、「キャリアコンサルティングの費用に係る領収書」、「キャリアコンサルティングの記録」、「キャリアコンサルティング実施証明書」が必要になります。 |
⑤-1本人・住居所確認書類 |
申請者の本人確認と住居所確認を行うため、官公署が発行する証明書です。具体的には、運転免許証、マイナンバーカード、住民票の写し、雇用保険受給資格者証、国民健康保険被保険者証、印鑑証明書のいずれかが必要になってきます。郵送の場合は、事故防止のため住民票の写し、印鑑証明書のいずれかに限ります。 |
⑤-2個人番号(マイナンバー)確認書類 |
マイナンバーカード、通知カード、マイナンバーの記載のある住民票の写しのいずれかが必要のなってきます。 |
⑥雇用保険被保険者証 |
雇用保険被保険者証は、従業員が退職するまで会社側が預かり、退職時に従業員に渡されることが多いので手元にない場合は、会社の総務部などに言ってコピーをもらうようにしましょう。
現在離職中の方で、ハローワークで雇用保険受給の手続きを済ませた方は、雇用保険受給資格者証を提出します。 |
⑦教育訓練給付適用対象期間延長通知書 |
適用対象期間の延長をしていた場合に必要となります。 |
⑧返金明細書 |
領収書が発行された後に教育訓練経費の一部を本人に返金する場合のみに教育訓練施設(受講している資格学校)から発行されます。具体的にはキャンペーン・特典等を受け取った場合の金額がそれに該当します。つまり、その金額分教育訓練費の計算から差し引かれる事になります。給付金の額が減るからと言って申請しないと給付金が取り消しになるなど弊害の方が多いので、ここは正直に申告するようにしましょう。 |
⑨払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード |
教育訓練給付金支給申請書の「払渡希望金融機関」記載欄に金融機関の確認印を押すところがありますが、金融機関の確認を受けずに支給申請書と同時に申請者本人の名義の通帳またはキャッシュカードを提示しても問題ありません。 |
⑩教育訓練経費等確認書 |
ハローワークで記入するアンケート用紙のようなものです。例えば「教育訓練施設への支払い総額」「講座を正しく終了したか否か」「講座が目標としている資格試験の受験予定日」などを記入します。 |
専門実践教育訓練給付金の申請の流れ
一般教育訓練給付と段取り自体は似ておりますが、用意する書類が微妙に異なったり、申請の段取りが異なっており、受講前と受講中(もしくは受講後)の最低2回は申請が必要となります。
専門実践教育訓練給付金を利用する場合には、受講開始日1ヵ月前までにハローワークへの手続きが必要となりますので注意して下さい。
申請手続きを行う前にやっておくべきこと
申請手続きを行う前に、ハローワークでキャリア・コンサルタントによる「訓練前キャリア・コンサルティング」を受ける必要があります。また、ジョブ・カードの交付を受ける必要があるのですが、自分であらかじめ記載して持っていく必要があります。
ジョブ・カードとは厚生労働省が推進するいわば履歴書・職務経歴書のようなものなので、記載に結構時間がかかりますので事前にダウンロードして記載しておくようにしましょう。
- ジョブ・カードは、専門実践教育訓練の教育訓練給付金の受給資格決定の際にハローワークに提出する書類の一つとなるため、虚偽の記載をしていた場合責任を問われる場合があるので正直に記載するようにしましょう。
- 過去にジョブ・カードの交付を受けたことがある場合は、交付済みのジョブ・カードを持っていってもOKですが、転職などで職歴が変わった場合は、職務経歴シートを新たに記入しておく必要があり、その他の項目についても最新化しておく必要があります。
- 就業に関する目標・希望などの棚卸しができておらず、自分で記入できない場合はキャリア・コンサルティグを通じて支援(もといダメ出し)をしてくれますので、そのまま持っていっても良いですが、可能な限り埋めておく事をおすすめします。
ハローワークで受講前申請を行う
さきほどのジョブ・カードの交付が済めば、受講開始日1ヵ月前までにハローワークへの手続きをする必要があります。
受講者本人の住居所を管轄するハローワークに本人が直接出向いて下記の書類を提出して下さい。
※やむを得ない理由がある場合は、代理人(委任状必須)もしくは郵送提出も可能です
①教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票 |
様式は以下のページからダウンロードして印刷する事も出来ますが、ハローワークで配布しているものはしっかりとした紙質のものなのでそちらに記入したほうが良いでしょう。 |
②ジョブ・カード |
訓練前キャリア・コンサルティングでの発行から1年以内のものが必要です。 |
③本人・住居所確認書類 |
本人・住居所確認書類とは、官公署が発行する証明書です。運転免許証、住民基本台帳カードのうち本人の写真付き。これらがない場合は、①旅券(パスポート)、②住民票記載事項証明書(住民票、印鑑証明書)、③国民健康保険被保険者証(健康保険被保険者証)のうちいずれか2種類。 |
⑤雇用保険被保険者証 |
雇用保険被保険者証は、従業員が退職するまで会社側が預かり、退職時に従業員に渡されることが多いので手元にない場合は、会社の総務部などに言ってコピーをもらうようにしましょう。
現在離職中の方で、ハローワークで雇用保険受給の手続きを済ませた方は、雇用保険受給資格者証を提出します。 |
⑥教育訓練給付適用対象期間延長通知書 |
適用対象期間の延長をしていた場合に必要な書類です。 |
⑦写真2枚 |
正面上半身、縦3.0cm×横2.5cmのサイズのものを用意しておきましょう。 |
⑧払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード |
教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票の「払渡希望金融機関」記載欄に払渡希望金融機関の確認印を押すところがあります。
金融機関の確認を受けずに支給申請書と同時に申請者本人の名義の通帳またはキャッシュカードを提示する形でもOKです。 |
ハローワークに対して支給申請を行う
専門実践教育訓練は、1年以上の期間訓練を受けることになるので、受講開始日から6ヶ月ごとにハローワークに申請する必要があります。
支給の申請先は、受講者本人の住居所を管轄するハローワークに本人が直接出向いて提出します。
※やむを得ない理由がある場合は、代理人(委任状必須)もしくは郵送提出も可ですが、出来る限り直接行ったほうがよいでしょう。
講座の受講状態 | タイミング |
受講中 | 受講開始日から6ヶ月ごとの期間(支給単位期間)の末日の翌日から起算して1ヶ月以内に申請する必要があります。 |
受講修了 | 受講修了日の翌日から起算して1ヶ月以内に申請する必要があります。 |
教育訓練給付金の受給資格者証 |
受給資格者証はハローワークから交付されます。 |
教育訓練給付金支給申請書 |
6ヶ月ごとに教育訓練施設(受講している資格学校)より発行されます。下記様式をご覧になって、「教育訓練支援給付金受給資格確認票とほとんど変わらない」と思われるかもしれませんが、細かい部分が微妙に異なります。講座の受講開始年月日などを記載する欄が追加になってます。 |
受講証明書又は専門実践教育訓練修了証明書 |
6ヶ月ごとに教育訓練施設(受講している資格学校)より発行されます。 |
領収書 |
受講者本人が納付した教育訓練経費について、訓練施設(資格学校)が発行してくれます。 |
返還金明細書 |
「領収書」「クレジット契約証明書」が発行された後で教育訓練経費の一部が教育訓練施設から本人に対して、還付された(される)場合に必要です。 ※「合格祝い金」や試験後の「キャッシュバック制度」がこれに該当します |
資格取得等を証明する書類 |
「追加給付」の支給申請の時に資格取得等を証明する書類が必要です。 |
追加給付申請でさらに20%の給付金が受け取れます
記事冒頭の教育訓練給付制度の制度内容ー>専門実践教育訓練給付金のところで軽く触れてますが、
専門実践教育訓練の受講を修了した後、あらかじめ定められた資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に被保険者として雇用された方に対しては、[教育訓練経費] × [20%] に相当する額を追加支給。
という制度内容となっており、ようは追加でさらに教育訓練費の20%分を追加で給付金として受け取ることが出来ます。
なので、一般被保険者として雇用された日の翌日から、1か月以内に資格取得等を証明する書類を準備して申請手続きを行うようにしましょう。また、現在一般被保険者として雇用されている方については、専門実践教育訓練を修了して、且つ資格取得等した日の翌日から1か月以内に申請出来るのでお忘れなく。
まとめ
ここまで長々と教育訓練給付制度の内容や申請方法について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
てか「専門実践教育訓練給付金」の説明が半分以上占めてしまったのでかなり複雑な制度に思えてしまうかもしれませんが、「一般教育訓練給付金」のみに限定してしまえば、そこまで複雑な内容にはなってないので、ご安心して下さい。
ちなみに、宅建士の資格講座に関しては「一般教育訓練給付金」のみが対象となるので、そちらだけ確認してもらえればOKです。
というわけで、内容がゴチャついてきたので、宅建士の教育訓練給付制度の指定講座を受講される方が行うべきことを以下にまとめておきます。
- そもそも自分自身が一般教育訓練給付金の制度を利用できる状態かを確認する
※本記事のフローチャート、もしくは教育訓練給付金支給要件照会票|ハローワークで確認する - 受講修了後に一般教育訓練給付金の申請に必要な書類を準備する
- ハローワークで申請手続きを行う
特に1番目の制度対象者かどうかの確認をされない方が多いらしく、一般教育訓練給付金の受給を踏まえて受講したのに結果、制度の対象者ではなく当然返金もされないといったケースが後を絶たないらしいので、この記事をご覧になった方はそこは確実に抑えておくようにしましょう!
なお、当サイトで以前、宅建士の資格講座で教育訓練給付制度の指定講座になっているものを片っ端から集めて受験率、合格率などを分析してまとめた記事がありますので、ぜひそちらも参考にしてください^^